紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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 三重県のため池の生物

 
アオサギ  

アオサギは、チュウサギやコサギのように生息数が多くはないが、比較的よく見かける大型のサギである。その飛ぶ姿は悠然としていて、舞い降りてくる時に、翼の風切り羽根の部分が黒いのが印象的で(写真上)、一瞬コウノトリをイメージしてしまう。とまった姿は、体全体が灰色がかっているが、目の上の眉部分から後頭部にかけて黒い模様があるのが特徴的だ。

 冬の間、アオサギがため池の岸辺で首をすぼめてじっとたたずんでいるのをよく見かける。一方、チュウサギやコサギは三重県津市あたりでは越冬せずに、南方へ渡ってしまうので見かけなくなる。

 アオサギは、水辺で小魚やカエルなどの水生生物を摂食している。ため池や河川の浅瀬に立ち、首を斜めに突き出して、目の前の小魚の動きをじっと見つめ、瞬時に水中の小魚を長いくちばしで捕らえる。アオサギが魚をねらっているのを見ていると、魚影が少ないためか、なかなか餌を捕りにいかないし、小魚をくわえている光景に出会うにはしばらく待たなければならない。待ち伏せ型の餌の捕り方は、小魚の密度が低くなると能率があがらない。ブラックバスなどが増加すると、池の魚影が少なくなるので、アオサギの採餌にも影響するところが大きいと思われる。

 アオサギは繁殖期になると、チュウサギやコサギが群れて営巣している雑木林などに、混じって巣を造り、4〜5月頃に産卵する。サギの繁殖地は、山奥ではなく、比較的人家に近いところに多いようだ。愛知県内の東名阪国道を走っていると、蟹江と弥富の出口周辺の木立にサギのコロニーがあるのを見かける。時には、飛び立つ際に車にぶつかって致死したであろう個体がみかけられる。こんな騒音と危険がいっぱいなところに集まらなくてもよさそうにと思うのだが。これは、人家や人の気配の有るところにはオオタカ、捕食獣などの天敵が近づきにくいことと関係していると思われる。

 
 三重県津市内では、毎年繁殖期になると安濃川の一色橋付近の竹と雑木の混じった林に多数の営巣が見られる(写真左)。4月13日午後4時頃の観察では、約30羽が集合しており、このうち、アオサギは10羽程度であった。他のサギではコザギがほとんどだったが、今後、チュウサギの個体数が増えていくと推察される。
 アオサギは1年を通じて、一定地域の里山環境に生息しているので、里山環境の変化を受けやすい生物であると考えられる。今後、木登りが得意な外来生物のアライグマの増加、ブラックバスなどの外来魚による在来魚の駆逐などの影響が考えられるので、注意していく必要があるだろう。



 
 コラム

 昭和30年代に、現在の埼玉県さいたま市浦和区の木崎小学校では、毎年、夏休みの夜に校庭で映写会が催された。クーラーのない時代、夕涼みを兼ねて多くの児童、父兄が映画を楽しんだ。

 昭和32
年か33年の夏休みの映写会で、北浦和駅近くで写真屋をされていた写真家の田中徳太郎さんが、撮り続けてきたシラサギ、アオサギなどの美しいスライド写真を皆に映写して見せたが、その中で、農薬汚染によって増加した未孵化卵、ヒナの死亡や奇形などの生々しい姿も映し出していたことが50年以上経った今でも思い出される。その頃には、サギが多数生息していた見沼田んぼで、残留性、強毒性の農薬である水銀剤、BHC剤、パラチオン剤などが多用されていた。

 そのような状況は、埼玉県の一部で起こっていた問題ではなく、全国的にも似た状況が起こっていたことだろう。現在は、それらの農薬は禁止され、低毒性農薬の比率が高まっているが、水生生物を餌とするサギ類の観察・モニタリングは農薬などの環境負荷物質の里山生態系への影響を検知する上で重要と思われる。

(2010.4.13 M.M.)


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